ガン(がん)の漢方アプローチ
こんにちわ、土屋です。
昨日の11月28日(日)に秋保温泉の「ホテルきよ水」で南北東北中医薬研究会の1泊研修会が行われました。
講師としましてイスクラ大阪事務所に勤務されている 華啓天先生の「ガンについて」がありましたので、ここで自分自身の復習を兼ねまして、私が講演で勉強した内容をご紹介させて頂きます。
華啓天先生は、西安省出身で 中国西安東方伝統医学研究会副理事長、陜西省中医大学客員教授などの要職も兼ねられています。
「ガンについて」 華啓天先生講演
ガンは、日本の三大死因の一つです。
日本人は1998年の統計では22万人がガンと診断されました。
日本人は、ガンにかかりやすい体質かもしれません。
ガン患者さんは、確実に増えてきています。
ここでガンのことを簡単に定義しますと「ガンとは、自分の細胞が異常に増殖していること」です。
自己の細胞では異物として認識できないので、免疫が働きません。
免疫とは、自己とは違う異物を認識して殺すことだからです。
そのため、抗がん剤や放射線療法では、ガンの細胞ばかりでなくて自分の体の正常な細胞にも負担がかかり副作用が起こることになります。
ガンの原因の外因としては、①環境が悪くなったこと。ダイオキシンなど…これらの有害物質は免疫系を混乱させます。治療の目標としては、免疫系を正常にしていくことです。
内因の原因としては、①ストレス…精神的なストレスと体へのストレスの2つがあります。陰陽のバランスを調整することが大切です。
②食べ物…食事では亜硝酸などが多く含まれているの物は、食道ガンや胃ガンになりやすいです。
さて、ここから本題ですが、ガン(がん)への漢方的アプローチを紹介していきましょう。
①ガンの微熱には、清熱解毒を。
ガン患者には微熱がある。
新陳代謝が盛んであり、清熱解毒で微熱から体を守る必要があります。
②補気と補血で、体力の消耗や貧血、白血球の異常から体を守る。
ガンは消耗の病気です。痩せたり、体力が落ちていきます。
これれらは「気の消耗↓」です。
貧血や白血球の異常、つまり「血(けつ)の低下↓」もあります。
気と血(けつ)は双子のペアですから、補気や補血は必要です。
③津液(体液)の消耗には、補陰で体内の水分を守る。
津液(しんえき)とは体液のことです。
細胞内の水分が減っていきます。
微熱や体の消耗があるからです。
補陰(ほいん)は必要です。
体内の細胞内の水分を守っていきます。
④「胃気あれば生きる」「胃気なければ死ぬ」
ガン細胞の毒素→微熱→食欲中枢を麻痺させます→食欲不振→痩せる→免疫↓→微熱…と悪循環を繰り返すようになります。
中医学では、「胃気あれば生きる」「胃気なければ死ぬ」という鉄則があります。
末期ガンでも、胃気(いき)を守ることが大切です。
すなわち胃気とは、食欲のことです。
たとえ余命3ヶ月の命でも、1~1年半と長生きできるケースが多いです。
この方法は、健脾(けんぴ)または補脾(ほひ)と言われます。
⑤ガンは淤血(おけつ)
ガン細胞には、フィブリノーゲンがあります。
本来は、血流はガン細胞を殺せるくらいガン細胞は弱いのですが、ガンは血小板という自分の体を守る衣服を着ています。
いわばガンの防衛反応です。
ガン細胞の血小板は、凝固し塞栓となり、血流から正常細胞に侵入し、血小板の衣服を脱いでしまいます。
これが血液からの転移です。
すなわちガンでは、淤血(おけつ)の状態であり、血流などの血液の状態が悪くなっていることが多いのです。
対策としましては、活血化淤法を用いることにより、抗がん剤などの効き目も良くなっていきます。
治療原則は、扶正と去邪です。
去邪は、ガンという邪気を追い出す方法ですので、対症療法的な意味をもちます。
苦参(くじん)やヨクイニン、白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)などがあります。
補気薬も、血(けつ)の巡りが良くなるので大切です。
気を補う生薬には、黄耆(おうぎ)、党参、白朮(びゃくじゅつ)、山薬などがあります。
血(けつ)を補う生薬は、当帰、川弓(行気の意味もある)、阿膠(あきょう)、酸棗仁(補心安神)、遠志(おんじ)などがあります。
方剤の例を挙げます。
私の好きな方法です。
①婦宝当帰膠
補気補血で穏やか。
②星火霊芝宝とシベリア霊芝
星火霊芝宝が一番と良いです。
これれらは多糖体類で免疫を上げる働きがあります。
婦宝当帰膠や星火霊芝宝、シベリア霊芝などは、扶正(ふせい)といって、体力を守り免疫力をアップさせる効能もあります。
外科的な手術や化学療法、放射線療法は、去邪(きょじゃ)になりますので、基礎体力を上げて免疫を守ることは有効です。
③白花蛇舌草
去邪に用います。
④晶三仙(しょうさんせん)
食欲を守ります。「胃気なければすなわち死す」です。
⑤麻子仁丸(ましにんがん)
便秘薬になります。穏やかです。
西洋医学の治療方法によっても漢方薬の選び方も変わります。
たとえば化学療法の「前」には、婦宝当帰膠を服用して免疫力を上げていきます。
化学療法「後」には、ガン細胞や自分の正常細胞が死んでゴミになり、貪食細胞が盛んになりますので、熱がでてきます。
その際には、今度はあまり補いすぎることも良くありません。
津液が損傷しているので、滋陰(じいん)や清熱が必要になってきます。
これは、組織損傷熱と言われ、打撲で赤くなって熱を持つことを思い出してください。
麦門冬湯や杞菊地黄丸などを用います。
ガンの人には、微熱がありますので、附子や肉桂などの大熱は慎重に用いるべきです。
有名な漢方薬に十全大補湯がありますが、肉桂が配合されていますので、熱感があるときには慎重に使うべきです。
たとえば微熱があるときには、微熱を治すことを考えるべきです。
「急則治基標」
「穏則治基本」
です。
微熱などの「急な症状」は、熱を下げることを考えて、「穏やかになってくれば」扶正で体力をつけていくべきです。
胸水や腹水は、どちらかあれば末期ガンですが、漢方薬では難しいです。
胸水を抜くと、たんぱく質も一緒に抜けていきますので、衰弱しやすいですので、抜かないほうがいいです。
華啓天先生がお持ちした資料です。
中国医学学術誌「東方医学」の2000年度のVOL16号の表紙です。
この論文「活血と癌」を読むと、活血化淤で血液をサラサラに流していくことはガン(がん)へのアプローチとして有効であると書かれています。
土屋薬局では、皆様のお役にたてますよう今後とも勉強していきます。
「土屋薬局 中国漢方通信」「土屋薬局のがんの漢方療法に対する考え方」も参考になれば幸いです。
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