2人目不妊。月経前症候群。PMSと漢方療法。AIH人工授精3回
先月の中医不妊症お茶の間講座、漢方勉強会で私が勉強したことの紹介です。
今回は、不妊症における月経前症候群(PMS)についてです。
結婚8年目。
38歳。
分娩1回。
人工授精3回。
HCG注射。
2人目不妊
○月経:周期バラバラで少し早めに来る、生理7~8日間、月経量多い、暗紅、血塊あり、生理痛軽い(以前はひどかった)
(注:周期がばらばらで、たとえば28~35日周期で毎回、排卵日や生理予定日が狂うことは、肝欝気滞といってストレス性のものが多い)
○帯下(おりもの):排卵期少
(注:排卵期のおりものは、子宮頚管粘液を表します。少ないときには卵胞の発育が悪い場合があり、中医学的には陰血不足と考えます)
○全身症状:
腰痛、寒がり、冷え性、尿が近い→これらは陽虚(ようきょ)
便秘と下痢を繰り返す、不眠不安、イライラ、肩こり、月経前下腹部と乳房張痛→肝欝気滞(かんうつきたい)
舌 淡紅、歯痕(しこん)あり
(注:歯痕とは舌の周りに歯型が付いていて、舌の横がギザギザしていることです。胃腸が弱かったり、浮腫みやすかったり、疲れやすい、息切れ、風邪ひきやすいなどあります)
このかたの名前をJ子さんにしましょう。
(私の同級生の芥川賞作家の阿部和重氏の「グランド・フィナーレ」を読んでみたら、「神町(じんまち)」がまた登場していましたので嬉しくなりました。「J」子さんは、「神町(じんまち)」の「J」から名づけました)
J子さんは、生理前にとてもイライラして、月経前症候群(PMS)がひどいです。
基礎体温は、犬歯状(けんしじょう)でギザギザが強いです。
「ギザギザの犬歯状の基礎体温」はプロラクチンが高かったり、ストレスが強いことが多く、生理前にイライラしたり胸が張ったりしやすいです。
……
この勉強会の中で私が強く印象に残ったことをまず述べます。
PMS(月経前症候群)は、精神的に「ああ、また生理が来るので妊娠できなかった」という気持ちの落胆や落ち込みなども影響して、余計に症状がひどくなる。とのことでした。
ですから、当店でもお客様と漢方薬の相談して「残念ながら生理が来てしまい、撃沈してしまいました」とか「生理が来ると思うと憂鬱になります」というコメントが多いのですが、私もこの勉強会ではメンタル面も大切なんだなあ~と思いました。
実際に、生理前のイライラや胸の張りなどのPMS(月経前症候群)が楽になって妊娠されているかたもいらっしゃいます。
ストレスが強く影響していることもPMSの背景にありますので、精神的なカウンセリングも有効とのことでした。
……
では、PMSに関して述べていきましょう。
PMS(Premenstrual Syndrome)とは
月経の前になると、体や精神的および行動などの面において種々の症状が定期的に繰り返される。
1)同じような症状が周期的に起こっている。
2)高温期の後半の月経前に起こる。
3)症状が重い。(日常生活に支障が出ている)
たとえば、生理前に仕事でミスをしたり、仕事をしたくなくなったり、周囲の人と喧嘩をする、子供にあたる、などの異常な行動。
○体の症状
頭痛、下腹部痛、むくみ、胸悶乳房張痛、吐き気、めまい、脱力感、息苦しい、のぼせ、食欲旺盛、動悸、肩こり、肌荒れ、腰痛、ほてる、耳鳴りなど。
○精神症状
イライラ、怒りっぽくなる、憂鬱、不眠、不安、緊張しやすい、何でも気にする、集中力低下、物忘れ、考えが止まらないなど。
○行動の異常
仕事に通常ないミスが増加、身内の喧嘩、引きこもる、突然泣き出すなど。
……
PMSの病因病理
西洋医学ではまだ完全に解明されていないが、
1)卵巣ホルモン E2/Pののアンバランス
(プロゲステロンが低い人に出やすい。プロゲストロンは「陽」。
エストロゲンが多すぎてもなりやすい。エストロゲンは浮腫む。「陰」。
また男性ホルモン↑、プロラクチン↑)
2)中枢内分泌の異常(ドパミン、ペプチドなど)
3)微量元素やビタミンの欠乏(カルシウム、リン、銅など)→自律神経が不安定
4)精神的ストレスが関わっているという説がある。
……
中医学から考える。
女性の生理特徴
「女性は血(けつ)をもって本となす」
女性は、生理のリズムを整えることが肝心。
「血少気多(けっしょうきた)」
血(けつ)が不足がちで、気が余りやすい。
つまり、自分のことや主人のこと、子供のこと、実家の両親のことなど、心配事が多岐に渡る。
なおかつ同時に、精神のメンタルや体を支える物質的基礎となる「血(けつ)」が慢性的に不足気味です。
……
PMSのおもな病因
陰血不足または陰虚及陽(脾腎陽虚)、肝腎不足
→肝気鬱滞(かんきうったい)→化火(かか)、淤血(おけつ)、痰湿(たんしつ)
基本病理:
心肝気鬱(しんかんきうつ)(化火、痰湿、淤血)
関連臓腑:心、肝、脾、腎
肝欝(かんうつ)のほかに心と脾と腎を考える。
1)肝欝気滞(かんうつきたい)
症状→月経不順(不定期)、月経前胸悶煩躁、怒りやすい、乳房張痛、下腹部張痛、食欲不振、舌質やや赤
治則→疏肝理気(そかんりき)
方剤→星火逍遥丸、炒麦芽、開気丸
加減応用→
肝欝化火(かんうつかか):頭痛、めまい、煩熱、ほてり、口苦、乳首が痛い、便秘気味
→加味逍遥散
2)血虚肝旺(けっきょかんおう)
症状→月経先期(早まる)、量が多く、小さな血塊があり、月経前後頭痛めまい、煩躁不眠、乳首疼痛、腰痛、あるいは月経後めまい、耳鳴り、動悸、舌裂紋など
治則→磁陰柔肝(じいんじゅうかん)
方剤→杞菊地黄丸、瀉火補腎丸、七物降下湯、芍薬甘草湯
3)脾腎両虚(ひじんりょうきょ)
症状→月経遅れがち、色淡紅、血塊(-)、月経前浮腫み、睆腹張満、食欲不振、ガスが多い、下痢気味、体が重だるい、腰痛、煩躁、あるいは乳房張満、白膩苔、歯痕
治則→健脾補腎(けんぴほじん)
方剤→参茸補血丸、牛車腎気丸、衛益顆粒など
……
補足:
私のノートより
基礎体温は睡眠時間6時間は必要。
基礎体温のバラつき→疏肝(そかん)と健脾(けんぴ)
健脾が必要。
麦芽を炒ったもの→健脾と疏肝作用があって使いやすい。
よく薬に対して不信感をもつ患者さん→薬だけの影響で体に不調がでたのではない。→自分自身の日頃の生活習慣が関係している。
(注:これはよくある話です。漢方の副作用や悪い影響ではないのに「漢方を服用したからこうなったのですか?」
「本当に漢方で大丈夫ですか?」と、いつも質問が多いかたがいます。中医学的には、今回の「PMSタイプ」で「肝気鬱結」があることがタイプ的に多いとのことでした。)
お悩みのかたは土屋薬局までぜひ漢方相談をお寄せくださいませ。
こちらのコラムなども参考になりましたら、幸いです。
…
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7月16日撮影の田子倉湖です。
今年の5月5日の「奥只見の早春特集」のときと比べてみてください。
すがすがしい青空に初夏を彩る緑ですね。
田子倉湖は、日本最大の人造湖です。
釣り人や、周囲の道路はバイク好きな人に人気があるようです。
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